『色彩と感性のポリフォニー』

  著者・小町谷朝生の専門は「色彩」なので後半の「色彩論」がメインなのだと思うが、私にとってはそこにいたる「感性論」がおもしろかった。つまり生物基盤へと考察が進んでいく部分が。少し箇条書きにすると・・・。

【はじめに】

・聴覚;故糸川英夫氏の発見したボーン・コンダクションからくるボディソニックは、耳は外界の音だけでなく、骨を伝わってくる音や地響きまでもとらえていて、それらの信号は外界音は異なる処理を受ける現象をさす。(こちらこそが喜びをもたらすのかも・・・。)

【第一章】

・視覚;網膜像は直接言語情報に関与しない大脳の古皮質・旧皮質や辺縁系にももたらされる。 ・触覚;ゴキブリはヒゲなしに生存できない。猫でもヒゲは重要だが人間ではそれらしい器官は見当たらない。少なくとも解剖学的・顕微鏡的には存在しない。それを「勘の働き」あるいは「心の動き」と人は呼ぶ。 ・知覚像は外界の刺激に対応した行動指令を受け持つので機能がわかりやすいが、感覚像は前知覚像であるともいえるが、連続しており機会をえると、知覚像は感覚像の性質を示してしまう。ただし、一般的には行動効率を下げることになる。 ・平行斑;左右の耳にあって耳が音波をとらえる仕組みと同じ様に有毛細胞のもつ感覚毛の上にのる耳石膜(ゼラチン様)のわずかな歪みと移動を察知して頭や身体の水平・垂直方向の解析を行う(モニタリング)。→一方の耳のゼラチンのみが歪んだときには自身の運動ではなく大地の回転という認識にいたる。(運動なしに身体が傾いたときも同様の認識) ・感性像は地球重力、地磁気、気圧の変化、湿度の変化などををとらえていると考えざるを得ない。それは、それらの変化がタブーとして多くの民族に伝えられていること、現在でも病変をそれらと関連付けえるデータが得られているからである。 ・感性は感情とちがう。感性は感じ取る力で、磨くものである(知性は増大させるもので、体力は鍛えるものである)(知性は萎えるが、感性は鈍る、体力は衰える)。 ・感性が豊かだと大きな目で捉えられた様々なものの関係の把握ができ、系統的な意味の連鎖(価値)を形成する様子が見通せる。一見ランダムで無意味な世界を秩序をもつ生産体系に変貌させる。それが可能な天才は感性と理性が一体となっている。 ・五感共連作用;五感が共同して知覚作用を作り出す働き。

【第二章】

・色のイメージと色名(薔薇のコテージと七福神・地蔵の十福、ペールやブルー) ・ネアンデルタール人も使っていた朱、19世紀の発明であるマゼンタ(血の色)、そして素材(もの)の復権へ(生成りアースカラー】 ・透明感と質感 ・「komatiya.pdf」をダウンロード 思考の場(新皮質)と感情発生の場(古皮質)と原感情所在の場(旧皮質) ・生命感性の優位性(←猿は泣かない、赤ん坊は声を上げる、幼児は泣き喚く、大人は泣く) ・「春の海、ひねもすのたりのたりかな」は外界と内面の一致を詠んでいる。 ・表層的作用と深部作用が行動の全てにおいてあるのであって、この深部作用を演出している感性を「隠れた主人」と呼びたい。(→松本元の「愛は脳を活性化する」) ・プラスティックの材質感の不在と可塑性 ・色の二つの原理、色秩序とは色の三属性(色相・明度・彩度)のどれか一つが共通することで得られる秩序。色の拡張性とは脳中で渦巻く色イメージで、どんどん展開していく流動的変化と広がりの大きさ。色は増殖しなければならない。形を持たず透明化した明るい彩の世界。それはそのまま外には出せないので、翻訳する、あるいはジャンプすることが必要。その緊張をさけるために普通はコミュニケーションレベルに合わせて内的世界を調整しておく。これは便利だが、心の貧困化を招く。しかし豊かな内的世界を直接表現すると外部から受け入れにくく、ストレスが起きる。

【第四章】

 ・白色と黒い色では白の方が寒い系統。(これは<光メタファー>ではなく身体の内外メタファー>を基準にしているのではないか。)