2007-01-01から1年間の記事一覧

穏当;〈適当〉の続きのつづき

さらに一晩あけたら、〈穏当〉という言葉がうかんだ。これで一件落着といきそうだ。 かつて、〈穏当・適当〉という対語が機能していた時代があって、その時分には、〈適当=客観判断〉が成立していたのであろう。だが〈穏当〉が死語になれば〈適当〉も意味不…

〈適当〉の続き

一晩寝たらすごいパターンを思いついてしまった。今までも単語には意味は存在しなくて、単語と単語の関係だけが実体ではないかと思っていたのだけど、典型例がなかったのである。それとこれも以前「〜です」「〜である」は機能が違うのではないかと書いたこ…

〈いい加減〉と〈適当〉

こういうのを間が悪いとか相性が悪いとか言うのだろうけど、ふだん見ない昼下がりのNHKをみてしまった。そして私の好きでない言葉の薀蓄話を聞かされてしまったのである。 言葉が多義性を獲得していくのは、当然であるから、一つの言葉には一つの意味しか宿…

「ソロモンの鍵」と月と

日本史、それも歴史以前のことを調べ始めると、いろいろなトンデモ本が公立図書館に並んでいることに驚く。だが私はなるべく手に取るようにしている。なぜならばそういう本には教科書や大新聞ではお目にかかれない資料が入っているからである。今まで感動し…

悲恋の型

「ロミオとジュリエット」の原型と銘打った、「トリスタンとイゾルデ」のリドリー・スコット監督が演出した映画のDVDを見た。この物語は12世紀中ごろにフランス語を通してヨーロッパに広まったアイルランド伝説をもとにした悲劇。 内容を要約すると、叔父で…

「自動車税」と「質量原器」と

もちろん、私が若い頃は「自動車重量税」だったが、数年前から町では「自動車税」という言葉が流通し出していた。ところが今朝のテレビのテロップで久しぶりに「自動車重量税」という言葉をみかけた。嬉しかったですね。でも、もしかしたらテレビ局には抗議…

〈のる〉〈のれ〉

11月7日は、朝7時からNHK教育テレビで「からだであそぼう」というのを放送していて、題字テーマが「のる」だった。最初と最後にこの題字が映った。 (1)最初のは静止画と一緒に (2)最後のはイッケン、日本語とは聞こえなかった、音韻掛け声「ノーレ」と…

エンセーテとモグラと猫と

たまたま町でみかけたのだけど、テレビでエチオピアのある部族が特殊なサトウキビを栽培しているということだった。10年に1度しか結実しないし、芋みたいに根からも増やすことができない植物でテレビではこれを「エンセーテ」と呼んでいた。百科事典には出て…

あとがき・極め付き・幕開き

どこかのブログで、文化庁が〈きわめつけ〉〈まくあけ〉は間違っていて、正しいのは〈きわめつき〉〈まくあき〉だとNHKを通して民衆教化に乗り出しているとか、と書いてあった。そのブログの主題は事例の問題ではなく方法論だったので、そのままにしておいた…

HALLOWEEN;ホネとミと

これはもともとはヨーロッパのお祭りだったようだが、現在は北米大陸で盛んに祝われている。クリスマスについで、お菓子の売り上げマークする日でもあり、レストランにとってもなくてはならない日のようである。そのためか、日本同様、お祭り日から、月齢は…

学力テスト問題の問題

これはテレビを見た心象の報告なので、あまり正確ではないが、こういう問題に関心のある方向けのメモ。ニュースで紹介されていたのは図示された、二つの公園のどちらが大きいかを問う問題で正答率が2割を切っていた。それゆえ知識ではなく考える力が不足して…

「メガネをかけた人」;事実文と判断文

ようやく、デカルトのテーゼ「原因の認識は結果の認識から導かれる」を、日本語の成り立ちと重ね合わせて考えることができるようになった。プロフィール欄にまとめたように同主語複文では動詞の語末形の連用、已然、連体の三つのカタチによって、〈動作の順…

擬逆語序〈已然・然聢〉と〈おと音ね〉と

ようやく宣長の『真暦考』を読み始めた。そこですぐ気がついたのが〈然〉の多用。以下。 ・然るべきわざなり ・然定めつる物ならむ ・然有しこと ・然あり来ぬる事 ・かならず 然して定むる ならいなり しかば、 ・仮名書には おほく 然 書(け)り 気になっ…

「メガネをかけた人」;複文

以前、「メガネをかけた人」の記事で、上記の句を考察した時には以下の両単文を中心に行った。 A1)あそこの、めがねをかけた人です。 A2)あそこの、めがねをかけている人です。 最近複文中の動詞の終止形について考察を行ったので、「〜した」「〜している…

コンスタンチヌス帝の右目

今見終わったBS朝日の「BBC地球伝説」の背景に、コンスタンチヌス帝の頭部彫像が出ていた。 ・一つ目は〈右目の瞳が三日月の(形 〉〈左瞳が六弁か八弁の花〉 ・二つ目は〈両瞳とも真円のくぼみ〉 それにしても両像とも巨大で、脇に掌の彫像も見えていたから…

重畳語彙〈これはこれは・それはそれは〉

久しぶりに『日本語文法を考える;大野晋』をめくっていたら、〈それ〉の第一義が〈我と汝とが既に知っているもの〉と捉えるべきであると出ていた。〈こ・そ・あ〉の三元系を無前提に肯定しないという点では賛成なので、違った角度から考えてみる。それは重…

「カセット効果」と動詞の終止形

ある雑誌に、大学の先生が留学生に異議申し立てをされたことについてのエッセーが載っていた。それによると日本語では(1)は、文法的にも意味的にも問題がないのに中国人の学生は納得しなかったとあった。だが、私にはこれは、柳父章氏の「カセット効果」…

『我輩は猫である』 ;漱石の型

明治38年にこれを発表して、39年に『坊っちゃん』『草枕』を上梓して、不惑の歳にあたる明治40年には一切の教職を辞しているから、この3点は一所に置いて、一緒に考えていくという読み方もあると思う。文庫本の解説は、漱石の時代の〈地〉として、西洋と日本…

『蓮と刀』 ;蓮根か LOTUS か

最近、刷り増しが流通しだした『日本人の行動パターン』というルース・ベネディクトの軍への報告書を核とする文献を見ていたら、『蓮と刀』が、『菊と刀』のアメリカでの出版社側の当初の仮題であったと書いてあった。もちろん、橋本治の『蓮と刀』のいくつ…

キーワード;日本語の成り立ち

プロフィール欄に、ここまでの中間総括をまとめておきました。以下。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 度量衡(weight and measures)逆文序対;〈動作の順逆〉・手を洗って、ご飯をたべる。 ・ご飯を食べて、手を洗う。_______;〈祝言・呪咀〉 ・I am lonely …

『さまよえる人ル−ス・ベネディクト』

私はこの本を「御茶ノ水図書館」が明大通りにあった時分に、そこでみつけて一気に読んだ。こういう本を日本語で読めることに感謝した。そして女性研究関係の本がそろっている開架式図書室にたどり着けた幸運にも感謝した。 だが原題 "A STRANGER IN THIS LAN…

『坊っちゃん』 ; 風土か流水か

ルース・ベネディクト関連の文献に出てきたので新潮文庫を読んだら、当然、面白くてスイスイ読んでしまった。ところが文末の解説が江藤淳という30年代生まれの男によっていたので、ちょっと警戒したが、どうともなく読み終えた。それが昨日のこと。今朝にな…

祝言・呪咀

http://d.hatena.ne.jp/midoka1/20060601 上記で取り上げた、言語理論の基礎法則を簡潔に示しす〈祈りと呪い〉の対語を漢字語の世界はどのように記述してきたのであろうか。とりあえず〈祈り・呪い〉はユダヤ・イスラムの古書記法にならって子音表記に変形す…

「同じと一緒」

9月5日は所用で外泊した。することもないので、ホテルのテレビを見るともなく見ていると上記の題の言葉の薀蓄番組が流れてきた。こういうのを不可抗力というのであろう。内容が前日の例えば「こんにちはの丁寧語は?」であれば、そのまま見過ごしのだろう。…

公共放送と言葉の薀蓄

日本語には「言わなでもがな」の重複表現が多いと言われている。例えば・・・・ ・落ち葉が落ちている NHKに寄せられたいろいろな投書を元に考察した内容を単行本にした『ことばおじさんの気になることば』を見たが、個々の視聴者に対する回答としては十分と…

朝青龍と村上龍とペコちゃんと

相撲中継は見ない。週刊誌は買わない。 だけどニュース番組はみる。電車の中の週刊誌の見出し広告は見てしまう。 こう、いう私にはここ1週間あまりの騒動は不可解である。それでも『月刊言語』に掲載されたデカルト誹謗論文のように自分で疑問を整理するまで…

「らぬき言葉」と〈書類 mood〉

私が地域の日本語ボランティアを始めたのは、「らぬき言葉」問題がかしましくなってきた頃で、会でも結構神経質な人がいて問題になった。そういう人にとっては「どうにも我慢ができない」らしかった。私自身は自分でも出てきてしまうし、テレビを見ていて、…

Leo Spitzer

昔、人文系の本を読み漁っているとき、今ひとつ頭がばらばらなままだったのだが、篠沢秀夫氏の『文体学の基礎』に出会って、私の本の読み方もアリなんだと思えるようになった。なんとも刺激的だった。 「テキストのどこを切っても、著者の血がどくどくと噴き…

CONTRONYM

このブログのカテゴリには「貴卑同源 」をおいている。こちらの意図としてはカテゴリというより「キーワード」のつもりなので、click しても何も出てこない。「同源 」は「同元 」とも書ける。あくまでニュアンスであるが、「語源学」「哲学」の分野に対応す…

左手に蛇、右手にはオサとサオ

『キリストと大国主』という本の題名からはトンデモ本を連想するが、中西進氏の著作である。1991年から産経新聞に連載された内容をまとめたもので、あまりに「日本特殊論」が繁茂しているので「普遍」の視点から書いたとある。その中にエトルリアから発掘さ…