2012-01-01から1年間の記事一覧

助詞対「なら・から」

以下の論考の補足というか後日版。 「 文型「1000円からお預かりします」考 http://d.hatena.ne.jp/midoka1/20100306」 さる古典文法書を繰っていて以下の両文対が浮かんできた。これだといわゆる「主語」は明示されないが、前者aには「私」が、後者bには「…

嵐山・小倉山

図書館で『新潮古典文学アルバム4;古今和歌集;1991』を借り出してきたら、ドンぴしゃりの歌(秋下・312)が出ていた。 九月の晦日の日 大堰にて詠める 夕月夜 小倉の山に鳴く鹿の声のうちにや秋は暮るらむ 紀貫之 説明に「夕月夜」は「ほの暗い」の枕詞…

『斉藤茂吉全集11』 抜き書き 

荷田在満(1706-1751)の『国歌八論』について調べ始めて、田安宗武の最初の歌の指導者であって、後に賀茂真淵に置き換えられたということをしり、『斉藤茂吉全集11;岩波1976』を繰ってみた。とりあえずのメモ。【田安宗武の歌】 ・我妹子と 相ふしながら …

「なぜ日本人は社会科学を理解できないのか」

上は今朝の新聞に載っていた広告本の副題。本題は「日本語の宿命」。 こういうのが、大っきらいな自虐史観注入本。 こういうのが、大っきらいな自虐史観注入本。 この人や、お仲間の内田樹先生は日本語の宿命に生きていて、そして「ハシズム批判」を展開し、…

ふさわし;びびし

いくつか古典にかんするホームページを読み始めたら、さっそく「びびし」についての考察にぶつかった。 http://d.hatena.ne.jp/consigliere/20121218/1355809272 それをもとに手元にあるベネッセの古典辞典にまとめてある、いくつかの「相関図」をみてみた。…

歯車形胸板

上野で行われている「中国王朝の至宝」展の中にあったのだけど(図録57p)、古代蜀の墓から出土した砒素青銅で被葬者は玉の輪とこの青銅の輪を腕にまいていたという。歯数は29だというから月齢との関係を否定するほうがむずかしい。だが、歯車として使われ…

『史記の「正統」』

12月2日に流されたNHKの「中国文明の謎」は謎をよびおこした。工藤元男、鶴間和幸、平セ隆郎の三氏の著書をとりあえず図書館からかりだしてみた。中の『史記の「正統」』は2000年に上梓されている。テレビで放映された始皇帝の咸陽・閣道・極廟については今…

貴徳の面

『四天王寺 聖霊会の舞楽;南谷美保』を繰っていたら、上記の写真が出てきて、角度のせいか、スペイン系の大鼻に見えた。「うつぼ物語」をまつまでもなく、渡来人や渡来文化は朝鮮半島からだけだった、というような学校歴史のすりこみを卒業したものだ。 さ…

技術飛躍と技術公開とのバランス;アンティキティラ島の機械

昨晩のNHKで流していた「古代ギリシャ 驚異の天文コンピューター」はすごかった。アンティキテラで沈没船の積み荷から見つかった古代ギリシャの青銅製の最大で18cmの歯車をいくつも組み合わせた装置とその解析経過報告。積み荷のコインから紀元前7−8世紀のペ…

「ひらがな」か「草かな」か

今朝の朝日新聞にも日経新聞にも「最古級のひらがな出土」との見出しがおどっていた。出稿は京都市考古資料館。だが、ホームページでは「墨書土器(仮名墨書も含む)」とある。そうでしょう。「ひらかな」というのは中世以降にでてきた固有名であって、正確…

熊野坐神社と三体の月

今年の6月6日に放送されたNHKの番組で知った。ビデオは即消去が原則なのだけど、これは「くまのにますじんじゃ」という読み仮名が気になって取っておいた。家人がなぜか見たいというので見ていたら、その時にはまったく頭に残らなかった「三体の月」の逸話…

半母音、という概念

某大学の研究者のホームページに万葉集の冒頭の句の詠みをローマ字表記しているのだが、以下のようにヘボン式でも訓令式でもないローマ字が使われていた。発音記号でもないから学校国語でならったローマ字でよめる人々を対象にしているならば、反則活動だ。 …

逆語序〈懐良・良懐〉

昨晩のNHKの番組で南朝の懐良親王と明への朝貢使節のことをやっていた。そこで明の書類には「日本国王 良懐」と書いているように見えた。 さらに懐良親王の肖像画がミズラ髪の若者姿だったのも興味深い。これは平安時代のお姫様同様「△」を想起させる。天の…

『庭訓往来』余話

『リポート笠間53号』が届いて中を見ていたら、p73に『庭訓往来』の訓註をめぐって、興味深い論考がのっていた。 【無情・無生】 名前「無生」が「無情」と筆写されていたのを、そのまま「草木瓦礫のごとき」としてしまっている例が出ていた。これが誤記だ…

『太陽は東から出る;中谷宇吉郎』

近所の図書館では利用者から提供される不要本のリサイクルをやっている。今回はとくに興味深かったので引用しておく。1961年発刊。 p220 換言すれば、原子力発電を水力および火力の代用品として考えるだけでよいかという点が、大きい問題である。商業ベース…

ダイダラ坊と虎塚古墳

夏ごろから、常陸の7世紀前半に作られたという虎塚古墳の見学をしたいと思っていて、秋の公開初日に行ってきた。同じ見学グループになった水戸から来たというご夫婦が親切にもダイダラボッチの像のある大串貝塚公園まで車で案内してくださった。 『常陸国風…

筒形銅器と巴形銅器

空白の四世紀から巨大古墳に象徴される倭の五王の時代までを古代朝鮮半島と東アジアの全体の構図の中で解明するというキャッチコピーにひかれて『巨大古墳と伽耶文化;角川選書』を手に取った。 p 210からの討論がおもしろかった。 筒形銅器はヤリにつけて振…

画の見方ー中川一政美術館にて

・富士山を見てよい景色だと思います。しかしよい景色は富士山ばかりではありません。 ・それからわからないものはわからないとしておいて、わかるものを先ず味わっていけばよいのです。人というものは其人の心の深さだけしか見る事ができません。深い心の作…

『似て非なる漢字の辞典;加納喜光』

2007年に図書館から借りだしているのだが、当時は印象に残らなかった。2009年に藤堂明保のことを調べたときも弟子であることは分かっていたが、それほど印象には残らないかった。だが、今回、虫が知らせたのか、再度借り出してみて、いろいろ参考になる記述…

不良;さがなし・ふさわず・よくない

少し前に本居宣長の「嶋生みの条」のキーワード「不良・ふさわず」についての考察をアップしてから、気になって新井白石について調べ始めた。昨日図書館からの連絡で大磯図書館にある『新井白石全集3;明治39年発行;吉川半七発行』を借り出すことができた…

武家諸法度ー宝永令

大阪の役後の1615年(元和元年)に最初の武家諸法度が出て以来、将軍の代変わりごとに発令されるのが例になっていた。家光の時に参勤交代が明記された以外大きな変更なく、寛永令以降は林家がその任に当たってきた。 だが、家宣は新井白石に命じて、国文で宝…

華夏

昨日のNHKで、現在の中国の歴史スローガンが「華夏」であって、「史記」に明記され、それは、近年発掘された二里頭の遺跡に比定された夏王朝を指事しているらしい。それにより4000年以上つづく中国を含意するという。内容自体は、他で知ることができるが、…

「女男(めを)の理」と「民衆の理論」と

以下にアップしました http://homepage2.nifty.com/midoka/papers/mewo.pdf ===============

社長は殺した・社長が殺した

西鶴関連の書物に当たっていたら、20年ほど前のものに、「日本語の論理」という項目があり、参考文献に「'象は鼻が長い」が上がっていた。 上記文例は一意に「被害者・犯人」を指事できるとあったので、本当にびっくりした。古い本なので実名は挙げないが、…

「ならば」と反実仮想

探し物をしていて 『肉中の哲学;哲学書房 2004』を繰っていたら,p330におかしな日本語文の紹介が載っていた。 例文1:僕が君だったら、僕は僕がいやになる。 これの語釈として、以下があった。 例文1の語釈;あなたの主体が私の自己をにくむ だが、これは…

デカルトの誤り

ちくま学芸文庫の『デカルトの誤り;A.R.ダマシオ;田中三彦訳』は、もっと早くチェックすべきだったのだが、失念していた。今になって気がついたのは、訳者の書いた『原発はなぜ危険か』が世間の耳目をあつめて、どこかで私の検索網に引っかかってきたから…

金星;明けの明星・宵の明星

平凡社から上梓されている「イメージの博物誌18」の『ミステリアス・ケルト;ジョン・シャーキー著1975 鶴岡真弓訳1992』を繰っていくと、なかなか面白い。さらに7世紀のサクソン人のブローチは眺めていてあきない 1〉鍛えられた記憶力による伝承か書記テ…

石段のきざはし

鎌倉銘菓にもある「きざはし」ではあるけど、今まであまりに気にとめていなかった。だが、先日テレビでウエストミナスタ寺院の螺旋階段のことが出てきて、その石組みが石の稜線だけで繋がっていると聞いて気になり出した。 日本では「木のはしご」でも階と名…

蛮夷・東夷

少し前のNHKで「魏志倭人伝」についてのトーク番組があって、いろいろ発言がある割には「魏志倭人伝・命」みたいな1時間だったので、もう少し客観的に考えたいと思っていたら1985年に上梓された中国の正史を九つ並べてかの国が日本についてどういう記述をし…

ニライ神カナシ

7月22日のNHKの柳田国男特集で『海南小記』の紹介があり、そこでは「ニライ神加奈志」という言葉が使われていた。 これで、ようやく有名な「ニライカナイ」の語根がイメージできるようになった。なぜ前者の方が焚書坑儒されて「ニライカナイ」だけが流通して…