2006-01-01から1年間の記事一覧

古神道の中核音韻〈ぼこ・ほこ〉−その二

前回、以下のような引用をしたが、音韻〈くら〉で用いた変換を適用することで、よりはっきり関連がわかった。 「onomatopoeia〈ぼこぼこ〉の第一言義は広辞苑によれば〈水の音、泡のさま〉とある。歴史のどこかで〈皮→川〉が生じたのである。」 前回は〈〜ニ…

音韻〈くら〉

吉野裕子氏は『隠された神々』の中でを意味する日本語としてに加えてをあげ、の原義をV字型のと推定している。さらに古事記など、神々の名にが頻出することを『扇』『日本古代呪術』で詳述されたと述べている。 このうちonomatopoeiaを形成するのはである。…

音幻

以前、コノハナサクヤヒメ>を逆接によって decoding したとき となって、それなりにおさまったとは思ったのだけど、の取り合わせの意味がわからなかった。諜報戦の世界では暗号は一見して暗号でも機能するが、世俗では暗号は暗号とは分からない形で流通させ…

古神道の中核音韻〈ぼこ・ほこ〉ーその初

A、ぼこぼこ ニスル、ぼこぼこ ニナル B、でこぼこ ニスル、でこぼこ ニナル 日本語話者なら、AとBの違いはちょっと考えればわかると思う。Aは temporal な表現で、たとえ〈ばぼこぼこに殴られて〉コブだらけ状態になっても、そう長くない時間のうちに、ま…

『狛犬の歴史』

著者は女性。丹念に、しかし自分の問題意識をもってつづられた記録。興味ふかかった点を備忘録として。 ①現在伊勢神宮など、明治期に格式の高かった神社には狛犬はないことにになっている。だが『皇代記』の中に後朱雀天皇が狛犬一対を伊勢神宮に奉納した記…

アイソメトリック定規とペテログラフ

以前、川崎真治の方法に触発されたことを書いたが、氏は日本に残るペテログラフの中から特にカタカナの「ヒ」に注目して〈祖音ジ〉を仮構していろいろな考察を行っている。だが〈ジ→ヒ〉を仮構するとなると〈あいまい子音論〉に立たなくても、候補となる音韻…

音幻;料理名

以前、〈すりゴマ〉には〈あたりゴマ〉という別名があると書いたが、料理名こそ〈偉・い・異〉の世界であることを思い出した。列挙してみる。残りは、『美味しんぼ』を読破すればもっと事例が集まると思う。(鍋についての薀蓄は同じ話に出ています) 〔武器…

音幻;魚の名

新江ノ島水族館に出かけてきた。新装なったときは、ものすごい人出だったので、ちょっと近寄る気がしなかったのだが、この寒空に出かける物好きは少ないだろうと期待していった。ほどほどの人で楽しめた。 ここの売り物はクジラとイルカのショーだ。ところが…

DVD 『綴り字のシーズン』

アメリカでは全国規模での子ども達の spelling contest があるらしいが、それを横糸に言葉と文字と神秘主義についてのさわりの映像がつづられている。神秘主義もカトリックや仏教ではなく、ユダヤ教の方で、なにやらヘブライ語と関係がありそうな〈シエファ…

〈くさび〉〈くさり〉と〈おもり〉〈たま〉

以前、「コノハナサクヤビメ」の逆語序を〈のこ石・縄・くさ鉄〉と decoding した時、〈くさ;鉄の古語〉とおいてから、〈くさび〉と〈くさり〉について考えを重ねてきた。どうやら、以下の対応関係を仮構しても良いように感じたので書いておく。 [くさい] →…

聞き間違えてみる

以前、「光源氏の物語」が「光源氏N、オモの語り」と聞こえてから自分の聞き間違いに注意するようにしている。 学校では「一つのかな文字には一つの音韻しかありえない」とマインドコントロールされてきたわけだが、英語の学習をとおして「あいまい母音」と…

subj: 鳥の目とグローバリゼイション

かつて東京の近郊に煙突があったそうである。その煙突は「不思議の煙突」と呼ばれ、あるところから見ると4本なのだが、別のところでは1本に見える。場所によっては2本に見えるし、3本の時もあると言われていた。 さて、この「不思議の煙突」は本当は何本…

お化け煙突

昔、「お化け煙突」の話を聞いたことがあって、出所を知りたいと思っていたのだが、ひょんなことから黒島伝治というプロレタリア文学者が1930年より以前に小説に採りあげていたことがわかった。 それは、隅田川の河岸にあったらしい。 「煙突は見る者の場所に…

はやし言葉〈すりすり〉

機会があって韓国映画「丘をこえて」をみてきた。中で「ありらん、ありらん、すりすり」というのが出てきて思い出したのが、去年見た沖縄映画「ナミィと唄えば」。やはり囃しの部分に「すりすり」が出てきていた。 現代日本語では音韻「すり」は卑音だ。〈す…

逆語序を用いた分析の例

こういう場を使って、人を難詰するのは気がひけるが、それなりの肩書きをお持ちの立派な先生のウエッブで見かけたので一言。そのウエッブでは、英語と比較した日本語の逆意味対の例として以下の二語彙と、その説明があがっている。反論として私の作った合成…

初級文法「どうか、よろしくお願いします」

ときどきゲーム感覚で以下の二文例が問題になる。 ・「どうゾ、よろしくお願いします」 ・「どうカ、よろしくお願いします」 この文例だけだと実際にはどちらでもいい。だが、どう違うのか説明せよ、となると結構めんどくさい。と思っていたら先週あたりから…

〈細石〉と〈細大同源〉〈用体の一体不離〉

もう12月だ。今年は良い年だった。30年近くつとめた会社を辞めて4年半。真っ暗なトンネルの中を方向感なしに生きている感じだったが、ようやく先に光が見てきた。年初来、吉野裕子氏の〈記紀の底にある蛇神信仰〉という確かな方法に導かれて古田武彦氏に出会…

語彙〈筬・おさ〉

この年になっていろいろ新しいことを勉強すると、記憶力の悪さが身にしみる。機織のことは古代から中世に変わっていく社会について想像をめぐらす時に重要なのだが、用語がなかなか頭に入らない。そんな一つが上記の語だった。今腰をすえて電子辞書を読んだ…

『全国アホ・バカ分布考』

16日に、〈stupid〉について考えたついでに新潮文庫にざっと目をとおした。著者は男性。したがって語源の部分は文字資料と外国語としか関連づけていない。その上、滋賀出身なので京都中心史観が濃厚。注目すべきは柳田が「ヲコ」との関連を重視して、中国…

ののしり言葉 と音韻文法

外国人に日本語を教えていくと、ののしり言葉〈馬鹿〉を英語に訳してほしいといわれることがある。たいていの日本人は〈fool〉という語を思い出すようだが、それは違う。だから相手は怪訝そうな顔をする。つまり〈馬鹿〉という語が使われていた場面と、〈foo…

microsoft社の日本語変換ー卑語の問題

、どちらでも〈底力〉に変換することができる。だが〈そこジから〉を変換するとおかしなことになる。このことでもわかるように私などこのソフトを使うことで日本語の orthography を勉強してるようなところがあるのである。一番頻繁に訂正されるのが、私の場…

本の題名ー〈そこぢから〉

ここ数日で二回も音韻〈そこぢから〉に出会ってしまった。以下である。 ①泉幸男氏の『日本の本領(そこぢから)』 ②農文協の広告見出し「江戸時代の底ぢから」 ①の方はかなり思い切った読み下しだと思ったが、首相の書き下ろし本の題名が「美しい国へ」とい…

〈えんぴつ、いちほん〉は間違いか

日本語教授法では数詞の教え方が重視されている。時間は〈いっぷん、にふん、さんぷん〉、鉛筆は〈いっぽん、にほん、さんぼん〉と教えることになっている。もちろんに日本語話者には当たり前のことであり、私も何回か生徒に教えてきた。だが最近、疑問に思…

「漢字かな混じり文」の次へ

つい100年ちょっと前までは、知識人の「漢文」と、庶民の「話すように書く文」という二つの言語に分裂していた日本語のことを考えると、よくここまで来たものだと先人の努力に敬服する。それくらい漢字かな混じり文、それにルビという啓蒙道具を発明した日本…

公式言語

『露伴随筆集ー言語篇』を読み始めたら、頭がエッセー・モードに切り替わらないが、ちょっと気分転換に。 正しい日本語を体現しているかのような大新聞が「縦書き」を支えている。しかしその言論の内実が果たして日本の国民に対して指導性を発揮しているのか…

日光と東照宮

昨日は会社時代の知り合いと日光へでかけた。午前中に中善寺湖畔を散策し、下で〈湯波〉を堪能し東照宮へ。中禅寺湖畔では山肌は冬景色だったが、湖畔を縁取る真っ赤な紅葉と真っ青な空のコントラストが美しかった。 車中で「鎌倉と東照宮は同じ子午線上にあ…

「JISの字種の拡大」と『阿刈葭』

友人からのメールで知ったのだけど、JIS変換で英字の小文字エルを入れてから、かなを英文字入力すると「つ」「やゆよ」以外でも、小さいかなやカナを入力できるようになっているそうだ。まだ全部のかなが変換できるわけでなく私が確認できたのは「ぁぃぅぇぉ…

〈シュメール文明〉と〈シュメル文明〉

川崎真治という在野の歴史言語学者(1921年生)がいる。本人が言っているのだが「ドリルという方法」によってシュメール語から古事記を読み解いている。うれしいのは大野晋先生のタミル語についての作業にも敬意が払われていることである。ただし、シュメー…

「通鼻音」と「逆語序」

宣長たちは実際の「通鼻音」の音韻をどのように聴きとっていたのだろう。〈牟〉〈爾〉〈毛〉〈武〉の他に、〈かな・ん〉〈かな・も〉〈かな・む〉〈カナ・ニ〉〈悉曇・うんむ〉が候補と上がっているようだ。とすれば〈m、b、n、k、g〉の有声鼻音の全てが可…

「通鼻音・ん」と「音便の訛音」

ここまでくると古田武彦 high というよりは「その余韻」に近くなってくるが、幸田露伴の『音幻論』の存在を知り、ついでに『「の」の音幻論』という1948年生の人の本を手に取ることとなった。その中の通鼻音,すんわち「ん」の歴史がとても参考になった。 通…