音幻「式神 / 識神」

NHKでは「安倍晴明」が取り上げられていた。ボーッと見ていたら、今まで気になってきた「式神 / 識神」の関係が少し見えてきた。
  これは【知識・職業・織物】の三元で処理していく。そうするとそれぞれの慣用略字がはっきり見えてくる。すなわち【式・可・蓄】。
   三番目がむずかしかったが、字書で「きく」を引くと出てきた。確かに織物というのは情報学から見ると、緯糸経糸で構成された平面状の知識情報の「蓄積物」である。だから、右辺の「音+戈」を略字「田」と置き換えて、上下に組めば「畜」ができる。さらに絹糸の古層にある草糸をくわえると「蓄」ができあがる。
     これで【工・音・衣・木】の四元が得られた。
    【職業】の最上位に来るのは役人の行う【裁可】であり、これにはまず多くの人の言い分を耳できくという膨大な前段の仕事がある。それらを記録するのは書記官などの下級役人。晴明もこの一員だった。、最下位と伝統的にみなされてきた仕事は「植栽」。だが、それではあまりにかわいそうなので、天皇陛下自ら「お手植え」を毎年残されている。両者ともに国家にとっての重要事である。なお、字書を繰ると【身音戈】も同字で略形は【身戈】とある。  
    【織物】はやがて染色技術の発達によって色彩画も載せられるようになり、字の記録は紙や羊皮紙が専用にあてられた。あえて弁別するときには【艹識】を用いる。
    【知識】はもともと官庁が担っていたが、出家や宦官が増えていくと膨大な量がたまっていって、それ以前にあったインカのキープや日本の注連縄やそれらの総称である「ふさ房ぼう」なのど一次元媒体は駆逐され、蓄竹・木簡をへて紙や織物などが主流となっていた。この時代になって、思考のために地面に書かれては消されてきた縦横に字を組み合わせる「方式」が確立したのだと考えることができる。



【歌経標式・喜撰式】
    学校国語では習わないが和歌の文献を探っていくと上記のような「式」が入った、用語が出てくる。もちろん算数や数学では「数式」なしには一日も過ごせない。学校行事では「入学式」にはじまって「式次第」というのがある。陰陽道でも「式」が出てくるのだが、全部のイメージがばらばらでなんともつながらなかった。が、やっとつなげられるようになった。これは「帳票様式」から一字とったと考えると全体をイメージできるようになる。要するにワードの画面ではなく、エクセル画面をイメージすればいいのである。
     和歌でいえば「折句」を作ろうと思えば、五行に分けて書いてから、推敲をするはずだ。これが「式」なのだと思う。「式次第」は縦書きに帳票方式で見出しだけが書き出されているのを参加者は見かけるのであるが、実行主体の先生方は、各項目の中に細かい次第や注意書きの入ったものを共有しているはずだ。世の中に出回っている「書き物」の総量はレストランのお品書きなども加えれば書物の量とも比肩できると考えられるが、違いは前者は捨てられてこそ浮かぶ瀬があるのであり、残こることは稀であることである。
文章;  唐衣 きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる 旅をしぞ思ふ
票式;  からごろも
      きつつなれにし
      つましあれば
      はるばるきぬる
      旅をしぞおもふ

あるいは平安中期の源順の『順集』に、でてくる「あめつち沓冠歌48首」は、31*48の票式と考えることができる。
参考;
「もう一つの いろは;あめつち http://homepage2.nifty.com/midoka/papers/JSKR10.pdf



【図式】
     上の様に「式」という語が縦にも横にも関連付けられて活用されるものだということがはっきり意識にのぼると、干支や方位図も「式」であることが明瞭になり、陰陽道や天文星座などがすぐに結びつく。そのような心構えがあれば古文書を訓詁読解するときにも線状のテキストから式を取り出すことが容易になる。私が実際やって見たのが「古事記の国産み」の条に出てくる「水蛭子」「淡島」「淡路島」の語源解である。
「女男(めを)の理」と「民衆の理論」と  http://homepage2.nifty.com/midoka/papers/mewo.pdf




【きく;菊】
なお、字書を見ていたら【鞫鞠】が同義とありびっくりした。これならば「花の菊」が「言葉あるいは計数を極める」を含意することになり、武家の女の子の名前としては上々であることがわかった。
わかったからって、どうと言うこともないが・・・・。
 いや、和歌を詠むというのは、正確に音の数を数えることなのだから、やはり「菊」というのは家政も情緒もという、女の子への欲張り期待を担うのだ。
  そして、順番が逆になったが、もちろん天皇家の家紋でもある。




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