ピカどん・原子爆弾・WMD

  初めて、広島へ行った。「通称;原爆資料館」はやはり訪れるべき場所であった。なぜならそこには「現場」があるからだ。原子爆弾が通常爆弾と違うのは空で爆発することでその風圧で構造物をなぎ倒し、それから4000度以上の熱で生き物を焼き殺すところにある。だから、当時未だそれが何であるかを知らないで自然に発せられた「ピカどん」という言葉こそが、その本質を表現しえている。
 「原子爆弾」はその後の軍拡で原爆が原水爆になり、今はWMD大量破壊兵器と名前が変わってきている。なぜなら、放射能汚染を象徴するのは不幸なことに広島長崎ではなくチェルノブイリになってしまったので、その最大の特異性はむしろ「なにもかも焼きはらう」ことになってきたからだ。
 WMDを最初に訳した人は「核兵器」に対し「大量破壊兵器」という漢語を持ってきたのだろうが、これでは子どもにもわかるメッセージにはならない。英語のweaponは、鷹の爪や上手な皮肉などを含む具体的な言葉なのだ。だから本当は「なにもかも焼きはらう兵器」「通称、なにもかも爆弾」とすべきだったのだ。しかし「なにもかも焼きはらう」という言葉は「現場」にたたなければ思いつくことはない。それが母語であり、日本人にとっての和語なのだ。