葛の葉

 あまりに当たり前で、今まで注意してみたことがなかったのだが、先日たまたま通りかかった工事場で葛の先っぽだけが見え、三枚の葉がきれいに並んでいた。しかも未だ葉が若いせいか、葉脈がくっきり見えた。なんだか「葵のご紋」に似ていると思ったのだけど徳川様の葵は「フタバアオイ」というらしい。一方、事典で「葛」をひくと特徴の一つとして「3出葉」と書いてあった。
 なんのことはない。当時の無学な庶民なら「三つ葵=葛」というイメージを抱いてしまうようにデザインされていたわけだ。もちろん識字層の人たちが「葵=葛」などと口にしたら即刻「無礼な」と叱りとばされたのだろう。
 さらに連想していくと記紀に出てくる葛城氏は〈葛城かつらぎ桂木〉と重なっていくわけで、そういう連想がある時期の識字層には共有されていたのであろう。