メガネをかけた人
質問1 ジョンさんはどの人ですか。
A1)あそこの、めがねをかけた人です。
A2)あそこの、めがねをかけている人です。
A3)あそこにいる、めがねの人です。
上の文例は初級の文型であるが、「めがねをかけている」と「めがねをかけた」の違いはあまり説明されていない。笠間書院からでた本をみていたら、角田氏の先行研究を基にした論文がのっていた。「青い目をしている」に対する考察である。だが納得できない。「青い目」は第一に「外国人・メタファ」であるのに、そういう特殊な文例を軸に日本語分析が出来るのだろうか。角田氏の分析として、ここでまとめられている内容は以下の文例によって無効になる。
・ 太郎はいい度胸をしている ・太郎はいい腕時計をしている
× 花子は大きいカバンをしている ・花子は大きいピアスをしている
さらに「◎青い目をしている」が「外人メタファ」の支えなしには非文となることは以下の文例によって明らかになるだろう。なお、「青い目」を「黄色い目」に変えてみれば、「黄疸メタファー」に支えられた場合のみ「青い目」と同様の結果になる。「赤い目」ならば忍者漫画に通じていない私の場合は「未知のメタファ」として処理するか、理解不能の非文として処理する。
・男はいつも怖い目をしている。 ・男はいつも青い目をしている
・男は今怖い目をしている。 △男は今青い目をしている
×男は怖い目をしている。 ◎男は青い目をしている。(外人だ)
cf男は目が怖い。 cf男は目が青い。
・男は怖い目をしていた。 ・男は青い目をしていた。
・男は怖い目をしてた。 ・男は青い目をしてた。
・男は怖い目をした。 ×男は青い目をした。
このパターンの記憶によって、「怖い目」系統の形容表現については、(B2)よりも(B1)を選好するのだ。
B1)・怖い目をした男がいる。 ・青い眼をした男がいる。
B2)△怖い目をしている男がいる。 △青い眼をしている男がいる。
もちろん、近年この選好は弱まっている。だから私は〈質問1〉に対する答えとしては〈今〉が省略された形ではあるが、(C1)の方が合理的だと考える。なぜなら〈あそこ〉に居る人が昨日も明日もメガネをかけていたり、ピアスをしているかどうかはわからないし、大事なのは〈今ここ〉の状態なのであり、その前提で会話は行われているのだから〈今〉が省略されているのは当然なのである。
このことは形容詞と動詞の境をめぐる歴史的な考察の貴重な資料となるに違いない。それはtense概念の推移を考える上でも大切な視点となるはずだ。
C1)めがねをかけている人、ピアスをしている人
C2)めがねをかけた人、ピアスをした人
keywaod;動詞文法