逆語序を用いた分析の例

  こういう場を使って、人を難詰するのは気がひけるが、それなりの肩書きをお持ちの立派な先生のウエッブで見かけたので一言。そのウエッブでは、英語と比較した日本語の逆意味対の例として以下の二語彙と、その説明があがっている。反論として私の作った合成体言をあげておく。これにより先に書いた「メガネをかけた人」の補足とする。

実例;「カップスープ」と「コーンスープ」。
説明;「カップに入ったスープ」と「スープにコーンが入っている」
合成体言;「カップに入ったスープ」と「コーンの入ったスープ」


  これは日本語話者が〈スープ・カップ・コーン〉という三つの語の現実世界での意味関係を知っているから上のように理解するのである。ここに初級文法が終わっても実際には使いこなせない原因となる、「立ちはだかる語彙構造」という外国語学習の根本問題が横たわっているのである。ここで、両方について逆語序を作ると以下のようになる。

逆語序;「スープカップ」と「スープコーン」
可能意味;「スープ用のカップ」「スープ用のコーン」

  両方とも現実には使われていないが、聞き手は、とりあえず意味を取ろうという積極的傾聴をするので、それを可能意味としておいた。この後、聞き手は自分の解釈した可能意味と談話の文脈を照合して可能意味で了解できれば、次の内容にすすむし、そうでなければ「ちょっと待って」とか言って可能意味について話し手に確認する作業に入るはずだ。母語話者同士の場合はかなりの高確率で可能意味が文脈に適合するので、いちいち確認したり、辞書を引かなくても済むので理解がはやいのである。そのために日本語では〈文法;逆語序〉が大きな助けとなっているのである。その前提にはあるのは〈名詞・形容詞・動詞〉という品詞の三分類ではなく、〈用言・体言〉の二元世界である。


■ちょっと、思いついたので合成体言2を備忘録として書いておく。
合成体言2;「カップを用いて製品化したスープ」と「コーンを用いて製品化したスープ」