山姥と金太 そして・・・・

    必要があって、図書館に『武家の女性』を借りにいったら、隣にあった森下みさ子氏の本の中に有名な浮世絵っぽい「山姥と金太」が載っていた。当然山姥が向かって右側、つまり〈卑〉。五月五日の金太の絵は向かって左が龍のメタファでもある「のぼり鯉」。つまり金太郎は二枚の絵に登場することで〈貴〉としてのメタファを維持していくわけだ。 

これでようやく〈2*2→3〉という日本の表彰システムの仕掛け、
つまり【顕す/隠す】のシステムがやっと少し実感できるようになった。

     ついでに書いておくと『武家の女性』は山川菊栄の実家の祖母の千世を中心とした幕末に水戸藩の学問係りだった家の歴史が中心にある。その口絵に千世とその両親の写真が載っている。当然向かって左が母親、ついで父親、そして右端に娘の千世の配置である。父親だけが立位であるから、写真には「きれいな山の型」、つまり〈∧〉ができていた。これが幕末までのオーソドックスなパターンだったのであろう。

     と、ここまではっきり書けば、かつての日本には〈∨〉パターンも存在したはずだという妄想が頭をもたげてくる。もちろん、〈のぼり鯉・金太郎・山姥〉がそれ。これはまがうことなく〈∨〉のパターンに属している。そのためにこそ不必要なまでに山姥は大きく描かれているのである。

     次に思い出されるのが、桜井市の大三輪社から推古朝の時に現在の奈良市遷座したと書かれている卒川社の姫神とその両親を祭るといわれる三殿形式のお社である。この三殿形式のお社は関東ではほとんど見かけないが四国、九州では結構見かける。これはそれぞれに祭る祭神によって∨∧両義である。例示してみよう。向かって左から・・・。
(∨)生母、姫神、生母の夫
(∧)生母、その夫、姫神


     大三輪社の場合は、「姫と両親」と明記されているから、二通りしか並べ方はないが、卑弥呼の時代は<イロセ・イロモ>の支配時代と言われているから、その時代の人であれば四つのパターンが可能性として検討されることになる。
(∧)イロモ、生母、イロセ
(∧)イロセ、生母、イロモ
(∨)イロセ、卑弥呼、生母
(∨)生母、卑弥呼、イロセ