CONTRONYM

      このブログのカテゴリには「貴卑同源 」をおいている。こちらの意図としてはカテゴリというより「キーワード」のつもりなので、click しても何も出てこない。「同源 」は「同元 」とも書ける。あくまでニュアンスであるが、「語源学」「哲学」の分野に対応する。別の言い方をすれば「通時形」「共時形」になる。ところで、これを英語ではなんと言うのだろう。日常語では〈same origin〉〈same meaning〉となるが、学術用語については、わからないできた。
     やっと、まっとうな大修館からでている『クレイジー・イングリッシュ』で上記の語をみつけた。ところがであるが、まっとうなはずの「リーダース」や「ジーニアス」には上記の語は見出しにでていない。むしろ、この語が出てくる節の題「ヤヌスの顔した英語は二枚舌」の方が私がこれまで考えてきた日本語の「貴卑同元」に近い。さらに辞書をひくと「ヤヌス;門・門口の守護神ですべての始まりをつかさどるローマの神で、頭の前後に顔をもつ」とある。つまりは〈同元・同源〉の神ということだ。なぜなら顔が二つあるということは自動的に〈二枚舌;同元〉なのだから。
      本文を見ていくと、最初の例は1710年に再建なったセント・ポール大寺院の功労者に対するアン王女の賛辞である。「あなたの仕事は awful, artificial and amusing です」の中のはじめの二語が現代英語の語感は「ののしり言葉」〈いやしめ語〉〈おとしめ語〉だが、当時は「ほめ言葉」〈うやまい語〉〈ヨイショ語〉〈敬語〉だったという。これを〈contronym=反意並立語〉だと定義している。さらに、一般的には一つの語が2つの対極的な意味をを持つようになると、そのうちの一つの意味は廃れるというのが言語の一般法則であるが、例外的にどちらの意味も廃れない〈語〉について言う、と説明する。
      それでも最初以外の例文を見ていくと、「貴卑同源」に相当する例文は見当たらない。本流は自他動詞の混交や〈in・out〉などの両義語である。
     そりゃ、どこの国でも文化でも「貴卑」を取り違えたら大変なことになる。日本語はかえって漢字を媒介にすることで音韻自体はcontronymの宝庫というより、ゴミ溜めのような言語になってしまったのであろう。その代わり文字を間違えたら、大変なことになる。代表が〈偉・ゐ/い・異〉である。一方、無学な人々がどのような音韻で暮らそうがお咎めなしという便利な結果になった。だが学校教育はそれではすまない。それが今の混乱の一つの要因であろう。