カステル・デラ・モンテ

   2月の再放送でNHKから流れてきたのだけど、世界遺産シリーズを別の角度から「王たちの物語;城」として作られたようである。この城は1248年に完成したといわれているが、その王の物語はまさ一聞の価値があった。それは神曲の作者ダンテが最近までイタリア中で貶められていたという話同様にヨーロッパの成り立ちの重層性を垣間見させてくれる。フェデリコ二世はなんと、十字軍遠征にからむ教皇との対立によって二度までローマ法王によって破門され、さらにイタリア政治に絡んで教皇軍と対峙し、三回目の破門を受け、それは未だ名誉回復されていない。
   念のため確認すると、手元のブリタニカ国際百科事典にはラテン名はのっていない。載っているのは1500−1540まで生きたマントバ公・フェデリコ二世のみである。もっとも神聖ローマ帝国皇帝としてのドイツ名は「フリードリヒ2世」として載っている。この城の主は http://www.asahi-net.or.jp/~rb5h-ikd/puglia/federico.htm によればノルマン・イタリア王国を受け継ぐシチリアの女王と神聖ローマ帝国皇帝・ハインリッヒ6世の王子で、生まれながらに二つの王冠を約束されていた。
    在位中になした仕事は多いが、テレビによれば二度目の十字軍遠征では相手方の、スルタンだったアル・カーミルと和平交渉を成立させてエルサレム無血開城に成功したという。それがなぜなのかはよく分からなかったが、とにかく二回目にも教皇の逆鱗に触れたらしい。統治そのものでは1231年のメルフィ法典(ローマ法に基礎を置いて、イスラムやノルマンの影響もみられる中世初の国法典)の制定者としてしられ、とにかくその教養は当時のヨーロッパ世界を抜け出て、一人近世ヨーロッパ人となっていたとまで言う人もいるらしい。
   その王が破門後に、そして最後に建てたこの城の形は特徴的だ。以下のホームページにあるが、八角形の城壁の角にさらに八角形の塔が付いている。
http://www.wine-jiten.com/italy/his/sicilia_2.html
   しかし番組ではその八つの衛星八角形の内部の天井は3本の直線で分割され、六角形を暗喩しているという。そうすると数象徴48=6*8が導かれる。あるいは中央の八角形に全数象徴1を割り当てて加えると数象徴49が導かれる。
   一方その内側の八角形の角の配置については正十字の八つの角に関連付けて説明され、さらには各長方形を黄金分割比と冬至夏至の日の出入りと関連づけている。
    見終わって、気になったのが、番組の前のほうで出てくる皇帝の棺を守っていたのが6本の円柱に支えられた長方形の解放屋であったことだ。これは黄金分割比を持つ長方形だったのであろうか。そんなことは多分、ヨーロッパの知識人にとっては常識、つまり暗黙知なのであろう。それは外の社会の人々、それはヨーロッパ人であっても非知識階級に属する人であっても日本人であってもであるが、にとっても暗号としか思えない知識なのであろう。
     さらに、この一文を書き終わって思い出したのだが、この城とメッカを結んだ線上にフランスのシャルトル大聖堂が来ると言っていたことである。地図の図法も分からないのであるが、当時のヨーロッパで関心を寄せていたのはエルサレムだったわけだから、エルサレムシャルトル大聖堂を結んだ線上あるいはエルサレムとローマを結んだ線上に象徴的な建物がないと対比的意味がわからない。それはあるのだろうか。もちろん『ダ・ヴィンチ・コード』によればシャルトル大聖堂はグリニッチ天文台世界標準時をもっていかれるまでヨーロッパの標準時を担っていたそうだから、もっといろいろな中世以降の象徴系に登場してもいいわけである。
     というようなことを考えていると、戴冠式のあったというアーヘン大聖堂のことも気になってきた。百科事典によると、シャルトルの方は古代ローマの遺跡の上に建てられたもので、アーヘンの方は由緒は不明であるが、その八角形様式はビザンチンによっては意表される東ローマ帝国様式を象徴しているという。とすればやはりアーヘン大聖堂とカステル・デラ・モンテを結んだ線分上に何がくるのか知りたいものである。もしかして、そこにはエルサレムでもメッカでもなくアレキサンドリアが来るのではないのか。


    そして、最後にエルサレムの神殿が象徴する円球の金のドーム、内部も八角形であったアーヘン大聖堂玉座が思いおこされた。デラモンテは完全に空洞の八角形を囲んでいるわけだが、もし内部は六角形という最も素朴な円周を象徴させるならば、6*9=54を得る。


     教皇インノケンチウス3世 ;  1160−1216
神聖ローマ皇帝フリードリッヒ二世 ;  1194−1250
 (ナポリ王マントバ公フェデリコ)
                 ダンテ ;  1265−1321
      フランス・ フィリップ二世 ;  1342−1404


組語 〈暗黙知・暗号・暗喩〉