ピタゴラスと黄金比

     西欧の古代史をひも解くとしばしば、黄金比という言葉がよく出てくる。説明を探していくと、たいていは現代数学との関連付けがてんこ盛りなので、気がめいる。いわく、フィボナッチ数列、葉序のパターン、リュカの数列などである。
   だが、『黄金比;スコット・オルセン』はまずピタゴラスと関連付けてくれる。そう、あのピタゴラスの定理で有名なピタゴラスである。そしてこちらの『ピタゴラスの線分の比喩」こそが代数学幾何学の分節点の象徴にふさわしい。

  定義は「長い方に対する全体比が短い方に対する長い方の比と等しくなるような線分式。このときの全体の比をφと名付ける。そうすると小さい方の比は1/φ。その象徴様式は以下。

フィボナッチ数列

「0,1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144,233,377,610、987、1597(略1600)・・・・」

黄金比

無理数Φ≒1.6180339・・・  1/Φ≒0.618・・・・   

ピタゴラスの比の中の数の比

・5/4=1.25         4/5=0.8
・5/3≒1.66666      3/5≒0.6
・4/3≒1.3333       3/4=0.75
参考値
π≒3.14・・・        1/π≒0.31830
√3≒1.732・・・   1/√3≒0.578・・
2√3≒3.462・・・   1/2√3≒0.288・・
略円周率3        1/3≒0.3333

  この本を繰っていくうちに西欧知識人における黄金比に関する暗黙知の総ざらいという感がしてきたので、さらに抄録しておく。

音程;完全8度

  なんのことはない。見慣れたピアノの鍵盤についての説明。下のドから上のドまで8つの鍵盤があって、中に5つの黒鍵があるということを「完全八度の中に13の鍵盤がある」と言語化している。これにはプラトンの教えという風に加上説で飾られれていた。それにしても、今までなにげなく使っていたけどなんで漢字〈鍵〉を使うことになったのだろう。
    さらに、ここで大昔、まだ給与所得者だった時のことを思い出した。藤枝守さんに教えてもらったのだが、今のピアノって工業製品としての品質において商業的に成功したのであって、いろいろ不満を持っている人も多いらしい。そういう人たちが「ピタゴラス純正律」を合言葉にある種の復古運動を起こしてきているらしい。

賢者の石;五陵形

 ヒトデから五弁花まで、ここに自然の神秘の究極があると最後の章節に書かれる。そして、正五角形の内角が108°であると書かれているのをみて、探し物が見つかった気がした。除夜の鐘はなぜ、108つなのか。源氏物語はなぜ、五四帖なのか。漢字字書の最初の部位数は540だったのか。

正n角形   内角の和   一つの内角   内角の半分
正4角形   360°   90°   45°
正5角形   540°   108°   54°
正6角形   720°   120°   60°
正7角形   900°   128.57・・°   64.28・・°
正8角形   1080°   135°   67.5°
正9角形   1260°   140°   70°
正10角形   1440°   144°   72°

おもしろいのは、七角形だけが無理数を生ずることだ。



逆語序対〈45・54〉
逆語序対〈4/5・5/4〉
逆語序対〈4*5・5*4〉
逆語序対〈4ー5・5ー4〉
逆語序対〈4+5・5+4〉



連続する三つの数〈67.5°;  正八角形の内角〉
連続する三つの数〈765=15*51〉


両対語〈ソクラテスプラトン〉〈ピタゴラスアリストテレス


組語〈108度 ・ 540/5 ・ 54*2 ・ 正五角形の内角度〉