「大ジョッキ」考

   先日NHKでは、上の語句をどう読むかということで関西では〈だいじょっき〉、関東では〈おおじょっき〉と読む人が多いと言っていた。さらに考察として今後は関西風のよみが増えるだろうと言っていた。
   だが、金をかけた定量調査結果の考察としてはちょっと物足らない。
    関西だろうが、関東だろうが居酒屋で「だいじょっき3つとしょうじょっき2つ」というような発声体は少ないはずだ。関東でも関西でも「だい3つ、しょう2つ」のように発声するはずだ。それでは調査に対する答えが関東・関西で違っていたのはなぜだろう。一番考えるべきは「調査」に対する態度そのものの違いではないだろうか。
    他者からの下問に対して、自分の日常行動を素直に反映する答え方と、規範から考えてそれに整合するように答えるかだと思う。よく知られているのは関西人は値切るのが上手だが、関東の人は値切ってはいけないとまず考える人が多い、ということだ。そもそも関西の方がお上に対する遠慮が少ないのだ。
    だから、考えられるのは、関西では〈ジョッキ〉から与えられる文脈では自分たちが使っている〈だい〉を素直に答えたのに、関東では〈おおじしん・だいじしん〉とか〈おおざら・こざら〉〈おおせんせい・だいせんせい〉などから考えて〈おお〉が正解だろうと答えた人が多いということであろう。関西から関東に来たら、居酒屋で「おお3つ」という発声体が飛び交っているということは考えにくい。

大・中・小〈だい・ちゅう・しょう〉

・大きい・小さい
・中くらい、まん中
・大皿・小皿
・皿の大(中)小

大規模・中規模・小規模

・大手・中小
・大企業・中小企業
・大震災・大地震
・おおじしん
・規模の大中小

敬称

・大明神・大神
・大先生・若先生
・大先生・無名の先生
?先生の大中小
・大臣・中臣・(小臣)

最後っ屁

・大木・おおき
・おおきい・おおきな
・おおく・おおきく



疑似逆語序対〈大規模・規模の大きさ〉
疑似逆語序対〈大ジョッキ・ジョッキの大きさ〉
疑似逆語序対〈中くらい・まん中〉