大ジョッキ・大ビン

    酒席に縁がなかったので、フツーの人がすぐに思いつく大ビンに考えがいたるのに時間がかかってしまった。 だが、こちらは〈ビン・瓶〉であるから江戸時代以前から続く由緒正しい以下の語法が適用できる。
逆語序対〈大瓶・瓶大〉
    とはいっても、現代風俗からみると、対語〈瓶で出される火落としビール・ジョッキで出される生ビール〉は様々な興味深い事柄を思いおこさせてくれる。
    まず、「瓶ビール」のみならず、「瓶ビール」といえばすぐ思いつく「御用聞き」も死語に近づきつつある。それに瓶ビールには大中小が存在したし、存在しているのだが、言語運用にあたってはつまり具体的な発声体においては〈大中小〉が存在することは珍しい。家庭であれば電話で「大瓶、**本」と口にすることはまずない。「大ビン」に決まっていたからである。一方外食の場合も、これまたメニューに「大ビール、**円」と書かれることもまれである。客は店の内装や食い物の値段、仲居さんの接客力などから当該店のビールが含意する「瓶の大中小」を憶測する。


 さて、もう一つ大事なことを思い出しておこう。それは瓶ビールの単位は20本だったことだ。学校では西洋人の使う単位としてダース(dozen)は習ったが、20を単位とする習慣については、ずっと後になってフランス語に化石のように残っているということを聞いた。だが、日本でも和名は〈とおか〉の次が〈はつか〉なのだから、歴史のどこかの時点で20を単位とした民俗があったはずなのだ。さらにいうと〈ついたち・はたち〉という対語も序数という累概念でいえば取り出すことができる。


最後にもう一つ、思い出しておこう

ピタゴラスの三数〈3・4・5〉
3:・ダース;12ケ;4*3=12;dozen

douse;一撃、脱着する、打つ・たたく
dose;分包された薬包、秤とること、・・・

5;・カートン;10ケ;4*5/2

double carton;20
decant;ワインを他の瓶にそそぐこと、
count;数えること


疑似逆語序対〈憶測・惻隠〉