接遇表現;〜させていただきます
テレビからしょっちゅう流れてくる上記表現にうんざりしながらも、どうしてこういうことになったのか見当がつかないので我慢してきた。ようやくヒントが見えてきた。
これは依頼応諾文脈で分析することだ。そのためには、少なくとも日本語では二つの型を抽出しておく必要がある。
1、ください型
2、いただけませんか型
それぞれの基本文型は以下。
1、患者の親;子供を診てやってください
医師ぶっきらぼう;わかりました
医師きさく ;さっそく診てみましょう
医師ていねい ;さっそく診てあげましょう
2、患者の親;子供を診ていただけませんか
医師ぶっきらぼう;ああ、いいですよ
医師きさく ;さっそく診てさしあげましょう
医師ていねい ;さっそく診させていただきましょう
これでようやくテレビの出演者の「話をさせていただきます」「プレーをさせていただきました」に感じる違和感の正体が見えてきた。
テレビを見ている私は出演者に依頼をしたことがないのである。さらには日常、人にものを頼むときでも、よほど目上の人にでもなければ「いただけませんか型」は使わない。だからまず感じるのは二つ。
1、私はあなたに頼んでいない。だからあなたが何かするのは、観客である私のためにではなく、誰か別の人、つまり依頼をしたテレビ局のお偉いさんのためなのね、とどこかで感じているのだ。
2、それにしてもあなたは「いただけませんか」という型で依頼を受けるほど〈お偉もお上品な方〉なのね、。そりゃそうよね。テレビの高みから茶の間に入り込んでくるんですもの、と感じるのである。
そして、事実NHKの「のど自慢」の出演者は、こんな馬鹿ていないな言葉はつかわない。時間がないからというなら、一般番組は、びらびら敬語で時間を水増ししていることになる。そして何よりも「のど自慢」の出演者は本気で楽しんで歌っている。