プリミティブな直覚

      たまたま、3月26日に、テレビのチャネルをあわせたら、新聞から天下りした、テレビの常連コメンテンタが涙ながらに「谷垣自民党総裁が、首相からの連立の誘いを断ったのは一重に菅氏の人柄の所以である」と訴えていた。
  本当に涙を流していたのかどうかは今となっては確認のしようがないが、まあ、老人が涙もろくなるのは常態であるから仕方ない。だが、その理由が天下の公器であるテレビを通じて伝達するに値すると考えていたのであるならば、知識人としては役割を終えている。即時に公職を辞するべきである。聞き洩らしがあったかも知れないが、私が耳にしたのは以下の二点である。
    ・唐突であった。
    ・前提条件についての申し出がなかったのは無礼千万である。


     これが一流新聞の論説員だった男の言なのか!妄言とはこういうのを指す。
     私は言う。

今になれば、菅首相が国家の非常事態であると、まず直覚したのは、正しかった。その上、その直覚を行動に結びつけることができたという事実は、腰の可動性が十分であり、決断力という点からは、リーダーとしての資質の片鱗を示していたということだ。


    一方、この天下りコメンテンターと同席していた自民党の若手議員には失望した。
   尖閣君が代問題では威勢のよかった目の細い議員男は、被災者に直接出来ることは国会議員にはない、と言いきった。なぜならば、国会議員が視察に行くと地元の負担になるからだと言った。そして暗にヘリコプターで福島原発を視察した首相を揶揄した。この件については朝日新聞小泉首相時代の官邸で敏腕を発揮したと言って、後になってメディアに登場した某氏のコメントとして「ヘリコプター視察は暗愚で慎むべきだった」と囲み記事を載せていた。

        だが、自分にわからない根本的な問題について、出来るだけ多くの要因を思い出しながら思考をめぐらそうとすれば部屋に閉じこもったり、本を読んだり、専門家を招集してバラバラな意見を耳に入れたりする、というのは最悪の選択だ。正しい対処法のいくつかを列挙すると・・。
    ・まず現場にいく
    ・できるだけ大きな全体像をつかむ
    ・考えるときはイラ菅と揶揄されても、貧乏ゆすりをしたり、ぐるぐる歩き回って、エコノミー症候群をふせぐ
    ・居眠りと揶揄されようとも、少ししでも睡眠をとって脳を最良の状態に保持する。
      (イギリスのチャーチル首相は必ず、午睡をとって判断ミスを防いでいた)


   首相が正しい判断のために福島原発上空ではなくて、上高地上空への空中散歩を実行したとしても私はこれを支持する。いわんや現場に急行したのだから誉められることはあっても非難されるべき筋合いは皆無だ。メディア研究者はこの間の文献を精査すれば書き手の中の隠れ自民党策士と判断行動の本質についての科学的素養の欠落者との二者を取り出せるだろう。


     さらに、尖閣問題で威勢の良かったこの議員には「自分で出来ることは何か」すら考えることができないことが明確になった。20kmからの退避勧告が出た後なのだし、25日にはすでに30km圏内の自宅退避者の生活に大きな支障が出ている事はすでに知られていた事実である。
     自宅退避というのは、24時間の積分被ばく量を考えてのことなのだから、1時間程度、域内に入って物資を届けたりする分には十分安全なはずだ。国会議員が率先してそういう行動を起こして、放射線を量としてとらえるキャンペーンをなぜ展開できなかったのか。そういうボランティアを組織できなかった、つい最近まで最大政党であったし、いまでも全国に莫大な量の不動産を私有している自民党は政治集団としての役割を終えている、と判断するしかない。