2007-01-01から1年間の記事一覧

逆語序対〈中止・止中〉

広辞苑を見ていたら〈止し〉の項目に現代日本ではニュアンスを取りにくい。例文を挙げると・・・・。 (1)運動会を中止した。(100%再開しない) (2)運動会を中止している。(聞きなれない) (3)運動会を中断した。(再開の可能性は低い) (4)運動…

抉られた左目

以前、左目がだけがまったく手をつけられていなかった以外は完全な女王ネフェルティティの胸像について触れたが、今回偶然にも日本の縄文晩期とみなされている出土品に、似た感じの仮面があることを知った。秋田県北秋田郡鷹巣町麻生遺跡からだという。(週…

作句

外国籍児童支援で中学3年の国語授業に入り込んだ。ちょうど俳句六句の提出が宿題に出ていた。授業のときも他のボランティアの大人も〈俳句=季語〉が重視されていた。だから〈俳句を作る=季語を決める〉という思い込みがただちに行動にでる。だから生徒はま…

〈it〉は〈それ〉か

月初に送られてくるメルマガで「酒井邦秀」の名前を知り、早速借り出したのが『どうして英語がつかえない?』。その「第6章:学校英語という名の人工言語」はすごい。題名だけでも拍手喝さいだが、「6.4節;the big picture 人工言語の根」がまたすごい。こ…

フンボルトの日本語 直示辞〈こ・そ・あ〉に対する考察

では、フンボルトは日本語について何を書いているのだろう。 二つの文章中で、アルメニア語の直前で取り上げられ、少しだけ違う二つの節があった。だが、フンボルトは直接日本語の採集をしたわけではなく、すでに日本語の直示辞系が〈こ・そ・あ〉であること…

『双数について』

1827年に行われたフンボルトの講演原稿。時期からいってソシュールはもちろんボアズ、ウォーフ、そして折口信夫がその影響を受けなかった、とはいえない資料。ただ、内容は古代ギリシャにおける双数概念の知識を前提としているので、その知識がない私には、…

Dailog in the Dark

ドイツから始まったという暗闇体験ツアー。だいたい一時間くらいで数人のグループがインストラクター〈主として盲人)のもとに迷路を通りぬける。数年前から日本でも定型的に開催されているが、昨年やっと切符を手に入れることができた。また行きたいとは思…

『図説 中国文明史 1』

中国でみつかった先史時代の遺構・遺物についての見取り図を与えてくれる。興味をひいた点をメモすると。母系制段階までに双形の土器が出現している点である。 ■母系制段階 ・絵付け土器・・新石器時代の仰韶先住民は〈紅・白・黒〉の顔料を持って絵付けを行…

音幻〈outrage〉

少し前に自分の〈outrage〉の経験について書きたいと思ったのだが、なかなかいい語彙が浮かばなかった。イデオムは浮かぶのだが動詞が浮かばないのだ。どうも小学校以来の識字教育が、こういう心の領域での「書き言葉」を「忌み言葉」にしているようなのだ。…

「デカルト=ニュートン主義」と「文化記号論」と

シルヴァステイン博士を囲む対談要録の最後が掲載された、『言語 2007年 6月号』では、編者注として「コギト」という有名なラテン語を引用して、デカルトが近代科学の負の部分の土台であるという。だがデカルトをデカルトたらしめているのはラテン語で書かれ…

「サピア=ウォーフの仮説」が隠しつづける何か

http://midoka.life.coocan.jp/papers/Whorf.htm 上の文章を書き始めたきっかけは、大修館から出ている『言語 2007年』で三回にわたって連載された「「言語学」をこえて」という対談要録である。当初から不愉快だったが、三回目になってほとんど outrage 状…

修験道と身体性

今まで、日本史の中でわからなかったのが、この「修験道」というキーワードだったのだが、偶然本屋で『石の宗教』という学術文庫を見かけて、読んでいろいろなことがわかった。著者は「五来重」。柳田國男の娘婿の堀一郎と若い頃からよきライバルだったとい…

「日本が未来を託す/外務大臣の生活と真実」

5月25日の朝日新聞に載っていた『ゲーテ』という雑誌広告の中に上記の見出しがあった。私は一瞬、と理解したのである。だがこれはがになるという、という解釈もありえるし、それが旧来の文法の前提にあった。もちろん、現在は〈日本の未来〉という用語が定着…

龍は左回り

なんとなく日本を取り巻く龍図を見慣れてしまって、古事記の〈右回りが正しい〉とか、四国八十八箇所めぐりの絵図が頭には入っていると、〈伊勢→宇佐→キエ→鹿島〉という回り方が以外が思い浮かばなくなる。だが、素直に図を見れば、龍は左に回るしかない。 …

山姥と金太 そして・・・・

必要があって、図書館に『武家の女性』を借りにいったら、隣にあった森下みさ子氏の本の中に有名な浮世絵っぽい「山姥と金太」が載っていた。当然山姥が向かって右側、つまり〈卑〉。五月五日の金太の絵は向かって左が龍のメタファでもある「のぼり鯉」。つ…

男女神と〈夫婦めおと〉

イザナギと左右関連の続き。 以下の仮説も悪くはないが、新説を。 http://d.hatena.ne.jp/midoka1/20060924 御柱と男女神と人々の三者の位置の設定の仕方によって、〈主ぬし〉と〈主あるじ〉を識別することができることに気づいたのは武家政権ではなく藤氏か…

聖母子像

気になったので、ダ・ヴィンチと中世の聖母子像を家にある美術全集でチェックしたら、ずべて、聖母マリアが向かって左側であった。間に出てきたアダムとイヴの絵では当然、アダムが向かって左側。 女王ネフェルティティの時代はかなり男権が大きくなっていて…

女王ネフェルティティの左目

昨夜のテレビで見たのだけど、砂の中から発見された彼女の彫像の左目は真っ白だった。『ウィキペディア(Wikipedia)』によると右目は石の象嵌なのに左目は彫った跡もない未完成品という。テレビでは、その後彼女の治世そのものが義理の息子によってほぼ全面…

「僕が、継いでいく心」

五ケ月ぶりに新宿の地下道を通ったら、読売新聞社による伝統文化支援広告の上記題名のコピーが依然として飾ってあった。以前にもひっかっかっのだけど、今回少し考えてみた。子供の歌舞伎役者の顔写真と共におかれたコピーであるから、当然、子供の気持ちを…

〈二字漢字語〉という呪縛

理科教育のことを勉強しているときに、先日書いた、〈重さ・重たさ〉のような対語をつかえば、難なく日常語で意味が通る文章を書けるのに、どうしてそういう工夫を専門家はしないのかと不思議に思ったことがある。以下。 〈重力量weight・重さ量mass〉と〈重…

葛飾北斎の「虎と龍の図」

昨晩のNHKで北斎の龍虎図を使ったクイズ番組が再放送されていた。初回のときも違和感があったのだけど、今回少し考えてみた。実は龍図の方は長らく行方不明で日本では虎図しか知られていなかったのが、フランスのギメー美術館の蔵で対の龍図が見つかって、今…

〈左右・さゆう〉と〈右左・みぎひだり〉

日本におけるの図像象徴を考えていくときに大事なのが〈左右・右左〉なのだが、いつまでたっても頭の中がゴチャゴチャなので整理した。カレンダーから金太と立ち雛の図を。雛の図は『ウィキペディア(Wikipedia)』を見る限り明治時代以降の習俗ということに…

「日本語は人造語だ」

日本語の重要性というか、私の中にある「死角」に気がついたのが2005年ごろで、昨年あたりから、度量衡のような専門用語には、民衆に普及するのに効率的かつ合理的な造語法があったのではないかと考え始めた。今までにやっと 4つばかり姿が見えてきた。以下…

質量の概念

先日、新聞を見ていたら〈質量〉という言葉が出てきたのだが、それが丁寧に「質量(重さ)」と記述されて、とてもうれしかった。それで、思い出したのが『ウィキペディア(Wikipedia)』の「質量の概念」の項の記述を訂正した方がいいと思ったことがあったこ…

『構造統語論要説』

フランス人でスラブ語の研究から出発した1893年生まれのテニエールの仕事を後継者がまとめた、1959年に出た初版の改訂版である。 ■主語 〈構造〉という名のとおり〈主題〉という語彙は影も形もない。目次に出ているのは〈主語〉と〈述語〉のみ。 ただし、そ…

『ことばは生きている』の第5章

『ことばは生きている−選択体系機能言語学序説』の第5章は、について、と訳出した上で、英語においても日本語教育学の従来の主張が普遍性を持つかのようなイメージを与えることに成功している。しかし本当にそのようなイメージに幻惑されてもいいのだろうか…

『ことばは生きている−選択体系機能言語学序説』

著者の一人、角岡賢一氏は『オノマトペア』の中で非常に鋭い分析を行っていたので、その後の仕事を見たいと思ったのだが、この本の情報しか手に入らなかった。日本語で書かれてはいるが、例文は英語だし、偉大なるHALLlIDAY先生の保障書付の書物である。だが…

音韻

4月17日の朝日と読売の朝刊に宮崎県知事の別々の著書の広告が載っていた。この事実もスゴイ(決して肯定的意味ではない)が、明治期の日本が生み出した大発明の一つであるの問題としてみると興味深い。朝日新聞には、KKベストセラーズの広告がで、読売新聞に…

音韻対〈よ・や〉

母音屈折対〈お・あ〉ルールが日本語音韻の古層にでんと横たわっていることは大野晋氏も指摘しているわけだが、現在に残る、その中核をつかみかねている。ただ、正式な発語法では神への呼びかけは〈よ〉で終わり、上から下への呼びかけは〈や〉でおわる。だ…

失われた世界;〈コト〉〈モノ〉

思考実験の続き ■[後置辞・終助詞] コト文 モノ文 [こそ] 義経がミコトこそ、我に、課せ。 義経がミガラこそ、我に、課せ。 義経がミコトこそ、我が課せ。 義経がミガラこそ、我が課せ。 コト文 モノ文 [をば] 義経がミコトをば、我に、課せ。 義経がミガラ…