2006-01-01から1年間の記事一覧

月経血の歴史

残念なことに番組名すら覚えていないのだけど、アフリカのかろうじて植物の蔓で作ったT字帯だけを身にまとう部族の少女を追ったドキュメンタリーを見ていて、びっくりしたことがあった。少女は月経の時は特別の植物でT字帯を作ることになっているので、その…

逆語序

古田武彦 high の続き。『日本語の形成』という本が出てきて、その中に「古代日本語の内的再構」という阪倉篤義の論文があって、その最後の「付け足し」の最後の方に折口のや坪井のいう「逆語序」という言葉が出てきた。それで『折口信夫全集 19巻』を借り出…

『「血」の思想』

前回「血統」という言葉を書いて、思い出したのがこの本。副題が「江戸時代の死生観」とあるが、要するに忌み言葉「血→月経→女→穢い」が、江戸時代には「血脈」「血統」などと良い意味で使われるようになった日本語での経過を丹念に追っている。

『ドグマ人類学総説』

これも図書館の棚で眼に飛び込んできた本。題名の効果。こういうジャンルの本は久しぶり。翻訳文ではあるが、腑分けの対象が現在だから、とっつきやすい。主題はデカルトの「人が信じていると思っていることと、信じていることは違う」。もちろん、こういう本…

『古事記・上巻』の構造 (その四)

では「ユングという方法」の妥当性を私はどのように考えるのだろうか。ユングもベルグソン同様、翻訳文を読んでもよくわからなかった。唯一の記憶は日野啓三さんの講演で語られた「日の出を待つ猿」の話はどうも無意識という方法を完成したユングに祖がある…

陰陽道なるモノへ

陰陽五行と天文関係の本を読んでだいたいの見取り図ができたように感じたので、晴明の陰陽道の概説書『陰陽道とは何か』を手にとってみた。いくつか知らなかったことが書いてあったので列挙する。関心のない風水関係は今回はパス。 ■土御門家を一番攻撃した…

『古事記・上巻』の構造 (その三)

最近は図書館の予約システムが便利で、県内の公立図書館の本は早ければ一週間で、遅くても一ヶ月以内に近所の図書館で受け取れるので、あまり図書館に行かなくなっていた。だが久しぶりに図書館の本棚にいくといろいろ余計なものが眼に入ってくる。今回はユ…

『南船北馬』

昨日は『古事記の構造』を借り出しに県立図書館まででかけた。その時に神田氏の同上の書をぱらぱらと拝見した。本当の遺稿集らしくまとまってはいないのだけど古事記関係と俳句論が面白かった。 古事記に出てくる、捕まることを想定して衣を「腐らせて」おい…

『初期万葉の女王たち』

先だっての、「『古事記・上巻』の構造」の項は実は「古事記の構造」という見出しで書き始めたのだけど、我ながらちょっと仰々しい題だなと、思ったので、ウェッブを見てみたら神田秀夫って人が上記の題名の本を書いていることがわかったので題名変更すると…

「直示詞そこ」と「坂の底」

前回、「直示詞そこ」は「底そこ」と関係ないと書いたけど、やはり『大地の子エイラ』がヒントになって思い出したことがある。それは人類が言葉を発するようになった初期には「発語」は「呼びかけ・応答」の繰り返しではなかったということである。 『大地の…

『古事記・上巻』の構造 (その二)

表題改め;「カサ・コソ」と「アマ・オモ」 あーあ。古田highはまだ続きそう。 いろいろ見てたら古田氏とは関係ないんだけど『上代語にもとづく日本建築史の研究』というのがあって、開いてみると、神社関係の用語として「ヤシロ」「ホクラ」「杜・もり」が…

『古事記・上巻』の構造 (その初)

古田武彦highの続き。。 「古事記」を考えるんだったら、最初の三柱の一人神たち、天之御中主神、高御産巣日神、神産巣日神について押さえるべきだと思う。それも当て字の漢字ではなく音韻の意味を捉えことが必要になる。 「アマ・タカ」の「あまねき実在・…

逆接による造語

まだまだ続く古田武彦high。 「度量衡概念の推移」の問題を考えている時に、少なくとも古事記の段階では造語法に2つの系統がある事がわかった。「ア段とオ段の対比」と「逆接法」である。とりわけ逆接法は漢字の造語法に受け継がれて行った。漢字例の代表が…

「ぬばたまの」と「くさり」

ひき続き、古田武彦high。ナウマンの『山ノ神』以来、久々のtrans。これが細部を共有するということなのだろう。脳の中に個別にしまってあったものがつながってくる。crysatalization。こういう状態になると、とにかく疲れる。脳が疲れる。体に脳がついてい…

『古代史の未来』

古田武彦の著作。あんまり「九州、筑紫、九州、筑紫」と出てくるので鼻についてきたが、detail へのこだわりには共感。 11、神武弁 神武天皇はどっちの言葉を使ったのか? ・おまえのツラなど見たくもない。 ・おまえのカオなど見たくもない。 こういう細…

『「君が代」、うずまく源流』

今日は「ペルシャ文明展」を見に行く予定だったのに主人が半休をとるというので出遅れて、ぶらぶらしていたら「出版ダイジェスト」が届いた。古田武彦氏の出版案内が載っていて急に気になり、インターネットへ。近所の図書館にあるのを確認して、主人が出かけ…

旧暦

日本語の数とか量とかの語彙の変遷を考えてきて、度量衡の次は暦の問題を整理しておく必要があるように感じ、今年の前半は、そういう書物を読んできた。吉野裕子の陰陽五行もそういう位置づけの中で読んだのだけど、そろそろそのものずばりの「旧暦」に関す…

〈一の位、十の位〉 と 〈三位一体〉

夏休みに外国籍の7歳の子の算数をボランティアで教えたが、一学期に習った〈6+7=13〉のような繰上げ算ができない。それでつらつら調べていったら、この場合の〈くらい〉は英語だと〈PLACE)なのである。それで横に並んだ四角を三つ書いて、真ん中が〈十のpl…

たかが正数、されど正数

7月23日の「正唱法と正書法」の中の「正数」は企業の管理職をやったことがない人にはわかりにくいと思うので、補足する。経営方針とか年度方針を書くときに、上司によって3とか5とか好みが違い、その数を間違えると、決裁がおりず、残業と無駄手間がふえるの…

形容詞の分類と「多い」

前回、「怖い目」と「青い目」を対比してみて、気がついたのだけど、学校で習った〈しい形容詞〉と〈い形容詞〉の分類に「怖い」は当てはまらない。やはり派生語を作って調べなくてはきちんとしたことは言えないわけだ。例をあげると。 ・言いたい ・言いた…

メガネをかけた人

質問1 ジョンさんはどの人ですか。 A1)あそこの、めがねをかけた人です。 A2)あそこの、めがねをかけている人です。 A3)あそこにいる、めがねの人です。 上の文例は初級の文型であるが、「めがねをかけている」と「めがねをかけた」の違いはあまり説明さ…

語頭の「ユ」

先に書いた「ゆ湯」は重要な語彙だが、派生語は少ない。それに対し「ゆか」は重要な派生語を生み出している。「生み出している」というのが擬人的で科学的でないとすれば「重要な語彙構造をなす」である。 ・縁ゆかり ・結わない ・ゆかず、いかせる ・いわ…

正唱法と正書法

『古代国語の音韻に就いて;岩波文庫』『いろはうた』『日本語はいかにつくられたか?』の三冊を平行して読んだ。どれも二回目のtry。最初は筋を追うことしか出来なかったが、今回は少し絵柄が見えてきた。関連するところを『情報の歴史』を参考に年表にして…

語頭の「ウ」

「ウ音]は不思議である。ワ行でもウ段は早い時期にア行とくっついていてしまった。 鵜・魚・鰻・「湖の後半」を見ていくと、明らかに「大きな水たまり」に関係がありそうだ。一方で容器の語彙を並べてみると[水盤もい」「甕かめ」と並んですぐに思い浮かぶ…

『山の神』−山と森−

たぶん柳田国男によって特別なkeywordになったと思われるが、同じ題名の本は二冊ある。著者は共に女性だが、一人はドイツ人で日本に長期滞在記録のない高名な民俗学者のナウマン。一人は吉野裕子氏である。方法も対照的である。一方は世界の中の日本で、他方…

「記紀」とは何か

「記紀」という図を理解するためには、それを支える地の理解が不可欠だと思う。学校で習わなかったことをまとめておく。 ●目的は「大化の改新」の基礎を固めること。ここまでは学校でも習うがもっと大事ななのは外戚としての「藤氏とうし」の地位を不動にす…

『易・五行と源氏の世界』

この3月から4ケ月と少しの間、吉野裕子氏の著書を読み続けた。子午線くらいは知っていたものの「たつみ」がどちらの方角を指すのかもわからない、浅学というよりは無学の身にしては大それた試みではあったが、ようやく21世紀の今とつながるべきはつながって…

『夜叉ケ池』

●歌舞伎をニューヨークからの客人の所望で見に行くことを決めたのが5月。まず日時が決められ、諸般の事情でこの舞台を見ることになった。決して蛇神論のために出かけたわけではない。だが、やっぱり見てきたのは蛇神。 ここでは二つの災難がともに水神・龍と…

ヤマタノオロチと龍

未だ古事記の中に阿蘇山のイメージがぼやけていることに拘っている。高千穂の名が出てくるので、知っている人はわかっていたのであろうが、大事なら大事ともっとはっきり描いてもいいはずだ。なぜ? 手がかりをヤマトノオロチに求めるとすれば、阿蘇一体の噴…

京都二泊三日

久しぶりに京都。初日は伏見稲荷と東福寺。夜はホテルで平日ディナーなる総カロリーの半分はデザートと思われる、フランス料理のフルコース。味は良かった。二日目は近代美術館の藤田嗣治展。その後黒谷経由で修学院離宮へ。帰りは鍵善の定番をいただき夜は…